半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が進出した熊本県で「南北格差」が表面化している。工場周辺や北部は活況を呈する一方、地理的に離れた南部は経済的恩恵が薄いためだ。地元自治体は南部にも波及効果を呼び込もうと、工業団地を活用した企業誘致などに腐心している。
「成長に向けた準備が着々と進んでいる」。1月初旬、熊本市で開かれた地元経済界の新年祝賀会で、熊本商工会議所の久我彰登会頭は半導体関連産業の集積を誇らしげに語った。
TSMCが熊本進出を表明した2021年以降、工場のある菊陽町周辺では関連企業が相次いで設備投資に乗り出した。TSMCは建設中の第2工場で、国内初となる回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)相当の半導体を2028年から量産する計画で、流れはさらに加速するとみられる。
インフラ整備も異例の急ピッチで進む。熊本県の木村敬知事は昨年3月、関連企業や教育・研究機関を集積させる「くまもとサイエンスパーク」を整備する構想を発表し、今年4月には三井不動産や合志市と基本協定を結んだ。JR九州も昨年10月、工場近くの駅と熊本空港を結ぶ新路線整備を打ち出している。
熊本経済同友会の笠原慶久代表幹事は「半導体産業の集積や人材育成の拠点に熊本がなる。手を緩めてはいけない」と語る。
課題は、農林水産業が盛んな南部へのTSMC効果の波及だ。熊本銀行の調査によると、半導体関連で県内進出や投資を公表した84社のうち、八代市以南地域を対象とした計画はわずか2社(昨年1月時点)にとどまっている。
投資の呼び水として、にわかに注目を集めているのは県が八代市で計画する工業団地(約25ヘクタール)だ。九州自動車道八代インターチェンジ(IC)や九州新幹線新八代駅への近さが売りで、2028年度の分譲開始を見込む。半導体関連や物流企業の誘致が念頭にあり、担当者は「TSMC進出効果を全県に波及させる起爆剤にしたい」と意気込む。
同じ南部の水俣市は、スポーツや観光分野で台湾との関係構築を狙う。台湾の台中市大安区と昨年10月、友好交流協定を締結。台湾で開催された競漕スポーツの世界大会には水俣のチームが参加した。水俣市は面積の約7割を山林が占め、まとまった工業用地の確保が難しいため「物流や人流を盛んにするしかない」(高岡利治市長)地域事情も見え隠れする。
木村知事は、南北格差の解消を県政の最重要課題の一つに挙げ「それぞれの地域の良さが、県北の半導体産業の集積に伴って広がるようにしたい」と述べた。
引用元:Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/37bcae5fe1d82d0112c6b1b94512b71c47797340
